環境問題対策部

通称、問題部

足が重い。
自分の足は1トンとかそんな重さになっているんじゃなかろうか。
もしくはこの足は他人の足なのではなかろうか。
談話室に向かうのを、体が拒否しているのだろうか。

それでも向かう俺は実直だと思うね。


談話室、たった1日で俺の高校生活が灰色になった場所。
ドアを引く。
昨日でもう名前と顔を覚えてしまった面々が既にそこに居た。
「やぁ、ケン。ちょっと君に渡したいものがあるんだ」
ドラゴンさんはそう言ってきた。
入って早々言うか、と思ったけど口にはしない。
周りを見渡すとみんな何か準備を始めている。
今日誕生日じゃないんですけど。

・・・歓迎会?

そう思うと、すべてが自然に見えた。
あぁ、なんだかんだいっていい人たちなのかもしれん。
少し右の口角を上げて準備風景を見ていた。
やがてドラゴンさんが戻ってきた。
手には正方形の小箱が握られている。
喩えるならば、ドラマなどで結婚指輪とかが入っているような箱だ。

ドラゴンさんは差し出した。
その小箱をパカリ、と開きながら。


―――思考停止。
それと共に、訂正が1つ。

さっき喩えたけど、あれはビンゴだった。
パカリと開いた小箱の中身は指輪。
少し太めで、結婚指輪じゃなくてファッション用の指輪。
いや、結婚指輪だったら困るけど。

その指輪には、剣のデザインが施されている。
そして、宝石ではないだろうが、紺碧(こんぺき)の石がついている。
正直、好みのデザイン。
「えと・・・」
だが言葉に困る。
部内で、まして昨日知り合ったばかりの、入学したての後輩に、指輪なんて。
「あぁ、コレね。僕たちみんな持ってるよ。環部の証、そして活動の必需品」
そういって、自分のを見せてきた。
ドラゴンさんのは龍の装飾に、翡翠(ひすい)色の石。
「・・・活動・・・でこんなの使うんですか?」
部の証なら、まだ理解できる。
でも活動に使うなど。
「こんなのって・・・酷いなぁ。まぁ、今から始めるから、分かると思うよ」
そういって、ドラゴンさんは他の面々と準備を始めた。
よく見ると、なんかゴツイ機械がでてきた。

あぁ、歓迎会ではなかったのか。

そんな暢気なことを思っていると、ゴツイ機械をドラゴンさんが動かし始める。
「さーて。やるか。おい、お前ら準備しとけよ」
・・・人変わった?
ドラゴンさんは、先ほどの声より低めの声で、より大きな声で、言った。
口調からしてまるっきり違う。
今の彼は、ドラゴンという名、龍田という名、冬磨という名、すべてが自然だ。 あぁ、この部活は人格が変わる奴ばっかかよ・・・。

「ドラゴン、機械をいじるとああなっちゃうんです。ボスも、部名で呼ぶと人が変わりますけどね」 あぁ、それを入部前に言ってほしかったですよ、セブンさん。
クスっと笑うセブンさんの中指からピンクの輝きが見えた。
よく見るとリーフのデザインに躑躅(つつじ)色の石。
やはり、彼女が1番この部らしい、と実感する。

俺はひとまず、セブンさんの指示通りに準備することにした。