環境問題対策部

通称、問題部

20XX年、春
高校の入学式。

俺は、とっくに葉桜になった桜を見つめた。
両親の話では、両親が俺と同じ歳のときの入学式は、桜が満開だったそうだ。
今では、卒業式、つまり3月上旬に咲くのが新しい常識となりつつあった。

人類は、2000年代から、活発に環境問題の改善に取り組んだ、と聞く。
だが、発展途上国等々の問題で、それはスピードを変えないままに、現在に至る。
平均気温が2度以上上昇し、たくさんのものに影響している。
たった2、3年で、いくつもの生物が、絶滅した。

もっとも、その『時代』を知らない俺にとっては、その実感がいまいちわかない。
気温が上がった、といわれても、これが普通、俺にとっての常識。

あぁ、入学式の帰りにこんなこと考えるのはやめよう。

パシャリ
入学式の後、ということもあり、写真撮影が行われている。
シャッターを切る者の大半は、父親達。
被写体はもちろん自分の子供。

そんなことを考えていると、俺の周りから、ファンデーション独特の匂いがしている。あまり好かない匂い。
ふと撮影風景を見ると、メイクをばっちりと施した母親達が、子供達よりも目立ってしょうがない。
派手なスーツや着物なら尚更だ。地味な制服であるために、子供の存在が薄れていく。

しかし、なんでこう入学式ってのは桜をバックに撮るんだろうか。
それも葉桜。意味がない気がする。
だったらその辺のタンポポとかの方がマシだ。花が咲いているだけ、な。

・・・と。
俺の視界に入ったのは、シャッターを切る制服を着た女性。
学年ごとに色別されたネクタイが青だから、2年生だ。
被写体は・・・?
初めは、弟か妹かを撮影しているのだろうと思った。

だが。

その人の被写体は、葉桜ただ1つだった。

頭の中を疑問符が埋め尽くした。