環境問題対策部

通称、問題部

なんだ。
準備だから、忙しく部屋をうろうろしたり(男女6人がうろうろできるような部屋じゃないが)、それなりの重労働を覚悟していたわけだが。
こりゃ準備と言うより、片付けじゃないか。
机と椅子と、まぁその他諸々を片付ける作業。
このゴツイ機械を使う部活なら、最初から最小限にしておけばいいものを。
本当にこの部活はわけが分からない。

そんな事を考えていると、
「っしゃー!そろそろ行くぜ?」
と、何者かに憑依されているであろう、ドラゴンさんが、準備完了を告げた。
なんとなく、ゴツイ機械を改めて見てみる。
機械音痴の俺には、例えば、目の前にあるディスプレイが、何を意味して1997の文字を映し出しているのか、分からない。
加えて英語なんてさっぱりだから、大きく1997と書いてある周りの文字から、その意図を汲み取る、なんて不可能なわけで。

…だがあれだ、唐突だが俺は歴史とか、社会に強いんだ。
1997、社会的に、そしてこの部活的に意味するのは、おそらく一つだ。
「…京都議定書」
そう呟けば、ドラゴンさん以外が振り向いたから、恐らく正解でいいんだろう。

「…言っていなかったのに、何で分かったんだ?」
とダンさんに言われた。
「俺、歴史とかそういうの好きなんで」
と言えば、ワンさんは、君はもしかしてこの学校1歴史に強いのかい、なんて目を輝かせて聞いてくる始末だ。
別段、それぐらい教科書で習っている筈じゃないか。
「大正解。そう、今から行くのは、1997年の京都。とりあえず、ざっとそういう会議とかの年にいくわ」
ん。
「…行く?」
「あら?行く以外に何が?」
何がって、待ってくれよボス。
ニコニコしないでくれよ、もう!
行く、だと。
もしかしてあのゴツイのがタイムマシンとか言わないでくれよ?
「そうですよ?」
とセブンさんが爽やかな笑顔を添えて言った。
待て待て待て待て!これがタイムマシン、だと?
「確かに、タイムマシンの存在は、少し前に異国の学者が発表し、1週間、ニュースはその話題だったのは覚えています。けど、あれは相当高価な物で、高校の部活が買うものじゃないし…。つか、ニュースじゃこんなゴツくなかっ」
「バーカ。俺が作ったんだ、アホ」
俺の疑問を途中で遮るドラゴンさん。
バカとアホを同時に使用しないでくださいよ、ちょっと傷つくじゃないですか。
…じゃなくて、え?
「ドラゴンは、タイムマシンを学者よりも1ヶ月早く完成させたよ。しかも、制作期間はたったの半年。世界ナンバーワンの科学者だと思うんだよ、ドラゴンは!だから僕は、彼と同じ部活に入った」
驚きの事実が明かされた。
ドラゴンさんというのは、やばい、本当に凄い人だ。
現に今、俺は鳥肌が立っている。


突然、指輪が光りだす。
「うぇっ?!」
変な声がでた。あああ、個性的でも女子が3人もいるのに!セブンさんとかに見られるのヤダなもう!
とりあえず、指輪を渡したドラゴンさんを見つめた。
「あぁ、それ、タイムスリップに必要なモンだからさ、取るなよ?」
そう言って、またタイムマシンに目線を戻した。
そしてカウント。3,2,1
カウントが終わった途端、タイムマシンが今までにないくらい光る。
俺を襲う浮遊感。
足が地面についていない感じ。怖い。


凄まじい光と、浮遊感、そして恐怖感。
気がついたら俺は、意識を手放していた。